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旧農林省蚕糸試験場新庄支場第四蚕室

以前は、原蚕の種の製造が行われていた施設です。1階で蚕の飼育をし、2階は蚕が繭となるための蔟が並ぶ上蔟室でした。東端には地下への階段があり、桑の葉を貯めておくための貯桑室がありました。現在は、1階ではカフェレストランや鍼灸院、写真家の展示スペースがあり、2階には企業のオフィスがあります。

館内イメージ

これまでのあゆみ


竣工年

1937年(昭和12年)3月

当時の使われ方

蚕を育てる(上蔟、営繭)

第四蚕室は蚕品種特性研究室が使用し、原蚕の種の製造が行われていました。第四蚕室は、第一蚕室同様に、1階で蚕の飼育をし、2階は蚕が繭となるための蔟(繭づくり専門の器具)が並ぶ上蔟室。東端には地下への階段があり、桑の葉を貯めておくための貯桑(ちょそう)室がありました。そのため貯桑室の壁上部には、外部から桑葉を入れるための開口部があります。

▲ 蚕の一生 工程:上蔟(じょうぞく)

【上蔟】

1階で蚕の幼虫が成⻑し、5齢と言われる段階に入ると桑を大量に食べ、大きな幼虫となり、最終的に繭をつくりはじめる時期に達した蚕の幼虫になります。幼虫は糸を吐き、繭を作りはじめるため、繭を作りやすい環境を整え準備をします。この状態の蚕を熟蚕(じゅくさん)と言い、熟蚕を集めて蔟(まぶし)に移すことを上蔟(じょうぞく)と言います。

▲ 上蔟室にて

▲ 熟蚕を蔟にいれる作業

品種ごとに熟蚕を一頭ずつ、所定の蔟に入れ、上蔟用の網を掛けます。網を掛けるのは、熟蚕期は行動が活発化するため、蔟から這い出してくるのを防ぎ、他品種との混交を防止するのが目的です。

▲ 蔟に網をかける

▲ 上蔟網(じょうぞくあみ)

蚕が繭をつくることを営繭(えいけん)と言い、2〜3日で繭を作り出します。繭をつくっている間も、高温、多湿を避け、一定の温度と湿度を保つための徹底した管理が必要でした。
繭を採取する場合、蚕が繭をつくってから羽化する前に、蔟から繭をかき集めます。これを収繭(しゅうけん)と言い、繭を作りはじめてから10日頃が収繭に適した時期とされていました。また、蚕の蛹(さなぎ)は蛹化してから10〜14日後に羽化し、成虫の蚕蛾(かいこが)になります。

▲ 2〜3日で繭ができあがる

▲ 繭ができた蔟

原蚕種製造所は原蚕種の種を製造するところですので、収繭後しなくてはいけないことがあります。一つは各品種の原蚕の繭の大きさ、雌雄別繭重、繭層重等の性状調査を行うことです。もう一つは、繭を切って蛹を出し、オスかメスかを鑑別する必要があります。発蛾までの日数が雄雌で異なる場合があるためで、雌雄間の発蛾日を調節するためです。さらに、産卵させるために産卵台紙や蛾輪、蛾箱を用意する必要がありました。場合によっては、浸酸(しんさん)の準備も必要でした。

▲ 回転蔟(かいてんまぶし)