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旧農林省蚕糸試験場新庄支場第一蚕室
以前は、1階では蚕の飼育をし、2階は蚕が繭となるための蔟が並んでいました。東端には地下への階段があり、桑の葉を貯めておくための貯桑室がありました。現在は、大人数での会合が可能な多目的ホールと、文化的交流を目的とした用途で利用可能な文化交流スペースとして活用しています。
館内イメージ

これまでのあゆみ
竣工年
1935年(昭和10年)10月
当時の使われ方
蚕を育てる(掃き立て、給桑、除沙)

▲ 蚕の一生 工程:給桑と徐沙、床替え
養蚕農家が桑を栽培し、糸繭生産をする交雑種を育て、繭を生産する一連の営みを養蚕業といいます。第一蚕室、第四蚕室は蚕品種特性研究室が使用し、原蚕を飼育し、原蚕の種の製造を行なっていました。

▲ 竹蚕座での飼育

▲ 貯桑庫内、壁上部に開口部がある
第一蚕室の1階では蚕の飼育をし、2階は蚕が繭となるための蔟(繭づくり専門の器具)が並ぶ上蔟室でした。東端には地下への階段があり、桑の葉を貯めておくための貯桑(ちょそう)室がありました。そのため貯桑室の壁上部には、外部から桑葉を入れるための開口部があります。
この部屋では春蚕(しゅんさん)、初秋蚕(しゅうさん)の飼育に使用されました。春蚕とは”はるご”とも言われ、春の桑の開葉にあわせて、5月半ばから飼育される蚕と、初秋蚕”あきご”は 7月半ばから飼育される蚕のことです。春が遅く、冬が早く訪れる新庄では、ボイラーを用いて温度管理を行なっていました。原蚕は品種登録された交雑品種の親で、登録された品種が多いと原蚕の数も多くなり、それぞれの原蚕が混ざらないよう注意が必要だったため、竹蚕座の上で棚飼育が行われていました。


▲ 竹蚕座での飼育
【給桑と除沙】
第一蚕室、第四蚕室では、催⻘室で孵化させたばかりの蚕の幼虫に桑を与えて蚕座で飼育を開始します(掃立(はきたて))。(孵化したばかりの蚕を毛蚕(けご)または蟻蚕(ぎさん)と呼びます)


▲ 給桑の様子
蚕は一生のうちに約100グラムの桑葉を食べます。1齢〜3齢の稚蚕期で3%、4齢で9%、5齢で88%と、そのほとんどが5齢の時期に桑を食べます。そのため、稚蚕期にはそれほど忙しくはありませんが、4齢以降は1日2回、朝、職員が登庁した直後と帰宅前に、給桑をしなければなりません。そのため、地下貯桑(ちょそう)室に大量の桑を貯めておく必要がありました。
また、蚕を病気から守るため、きれいな環境で幼虫を育てる必要がありました。蚕の寝床である蚕座(さんざ)に溜まった糞や食べ残しの桑を取り除き掃除をする除沙(じょさ)と言われる作業を行います。


▲ 除沙・床替えの様子
その方法は、蚕の上に蚕が通れる程度の目の網を掛け、その上から桑を与えると、蚕は桑を目当てに這いあがります。蚕が全部、這いあがってから網を持ち上げ、下に残った糞や食べ残しの桑を取り除き、きれいな蚕座に替えるというものでした。1階では、蚕の幼虫に給桑と除沙を繰り返し行われ、幼虫が成⻑し、桑の葉を食べなくなる(熟蚕(じゅくさん))と、糸を吐き、繭をつくる段階になります。この状態の蚕になると、繭をつくるための蔟に入れるため、2階の上蔟室へと移されました。









